クジラもやってくる、やすらぎの丘

〜マカプウ岬〜

オアフ島の東海岸に、一般の旅行者にはあまり知られていない絶景のスポットがある。

 

ワイキキから東へ車を走らせ、約30分。ハナウマ湾を望む海岸線のルートを通過し、名勝の潮吹き穴、サンディ・ビーチを過ぎたところに、その岬はある。愛称は「Makapuu」。ハワイ語で、丘という意味だ。

 

マカプウ岬は、その名の通り小高い丘になっていて、麓から丘のトップまで、鋪装されたトレイル(登山道)がのびている。トップの展望台までは、徒歩30分。道は比較的なだらかで、トレッキングのレベルで言えば、ダイヤモンドヘッドとほぼ同じといったところだろうか。子連れでも楽しく登れる、ハイキングコースとして、地元の人たちのあいだで人気のスポットとなっている。緑の草原の中にのびるトレイルを歩いていくと、徐々に視界が広がっていき、サンディ・ビーチからカイルア・ビーチまで、見渡す限り、美しい海と山々に囲まれた大パノラマが360°に広がっていく。

 


冬になると、この岬の沿岸にクジラがやってくる。 アラスカ近海で夏場を過ごした座頭クジラたちが、いよいよ出産シーズンを迎え、12月~3月にかけて、ハワイ沖へ移動してくるのだ。 

 

この時期、マカプウの丘から海を眺めると、必ずと言ってよいほど、クジラの潮吹きを目にすることができる。一頭現れたら、しめたもの。その周辺に暫く目を凝らしていると、次々と仲間たちの姿が見えてくる。クジラはたいてい、5~6頭の家族ごとに海を旅しているのだ。波間に見え隠れするバックやテール。運よくブリーチングを目撃すれば、その優美なボディをまるごと目の当たりにすることができる。

 

いつだったか、この岬にハイキングに出掛けたとき、丘の中腹あたりで突然、とてつもない轟音を耳にした。ドカ~ン!と、まるで何かが爆発したかのような音。まさかと思いながら、突き出した崖の先端に駆け寄り、下を覗くと、岬の麓からそれほど遠くない沖合に、崩れ落ちていく水の柱が見えた。と、まもなく、そのすぐ先に黒い巨体がニョキッと現れ、のけぞるような格好で優美な曲線を描く。そして次の瞬間、ドカ~ン!と、またあの轟音が鳴り響いた。 

 

見れば、そのまわりにプシュ、プシュッ!と、噴水が上がっている。黒光りしたバックやテールが見え隠れするのをざっと数えて5頭くらいだろうか。大きいのもいれば、小さいのもいる。母子なのか、大きなクジラの傍に小さなクジラがぴったり寄り添う姿が、なんとも微笑ましい。やがてその家族は、仲睦まじく沖の波間へと消えて行った。

 

ホエールウォッチングは、クジラの活動が盛んな午前10時から午後3時くらいがベスト。岬のトップまで登りつめれば、ぐるりと広がる大パノラマのどこかに、きっとクジラの姿を見つけることができるだろう。ダイナミックなその姿を間近に見たければ、双眼鏡をお忘れなく。

 

(写真/文:ふなはしまさこ

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